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「荒らし共栄圏」を理解するために欠かせない用語・数字・人物をキーワードごとに解説します。

荒らし共栄圏

「荒らし行為をする日本最大の組織」をうたった匿名のネット集団

インターネット上で数万人が緩やかにつながっていたとされる集団。リーダーの少年の法廷証言によれば、2020年8月ごろに設立され、「荒らし行為をする日本最大の組織」を名乗っていた。メンバー同士は直接会うことはなく、秘匿性の高い通信アプリや掲示板でやりとりしていたという。

企業や団体へのサイバー攻撃、誹謗中傷、偽情報の拡散、選挙妨害などを活動として掲げ、部門ごとに「どんな荒らしをしているか」をリーダーが把握し指示していたとされる。活動資金は偽ロレックス詐欺や違法薬物で得た金だったと本人が証言している。

集団が運営していた公式wiki(2024年2月最終更新)には、共産党独立 2020年8月23日、共栄圏成立 2020年8月25日、代表者/創設者 ワッパステイと記録され、「ワッパステイ主席が創設し直接指導する、日本最大の荒らし組織」「旧荒らし連合軍AARRの実質的後継」と位置づけられている。正式名称としてロシア語・中国語・韓国語・英語(Troll Union / CTKP)の表記も定めていた。

組織の性質

実態は、インターネット上の迷惑行為・攻撃(「荒らし」)を目的に、匿名のメンバーが流動的に結びついた集団である。これに共産主義国家を模した体裁を与えた点に特徴があり、「主席」を頂点に「科学委員部」「技術委員部」「内務委員部」「教育部」といった部門を称し、荒らし主義革命という思想、機関紙「荒らし人民日報」や「大字報」といった宣伝媒体を備えていた。

掲げる理念とは裏腹に、実際に行われたのは詐欺・サイバー攻撃・特定個人への集団的な嫌がらせであり、外国人や障害者への差別的表現、名指しした個人への激しい中傷を伴っていた。思想的な装いと金銭目的・嫌がらせという実態の乖離は、この集団を理解するうえで重要な点である。

当サイトでは報道での表記に合わせ「荒らし共栄圏」と記載する。

※出典:高知新聞 2026年11月1日「高知で逮捕『偽ロレックス事件』で露呈したトクリュウ集団『荒らし共栄圏』の闇」

「主席」ワッパ

集団を創設し「主席」を名乗った指導者の人物像

集団を創設し、「主席」「領袖」を自称した中心人物。オンライン上のハンドルネームは「ワッパステイ」で、「ワッパ」とも呼ばれた。YouTube・Twitter の各アカウントも同名である。顔も知らない中高生らを扇動し、年上の大人も実行役として動かしていたとされる。

自己演出

公の人物像として前面に出るのは、毛沢東や文化大革命期の中国共産党を強く模倣した自己演出である。自らを「人民心中の紅太陽」「偉大なる領袖・導師・統帥・舵手」と形容し、マルクス・レーニン・毛沢東の語彙を借りた檄文を発表した。公式wikiには「荒らし共栄圏万歳 ワッパステイ主席万歳」のスローガンが掲げられ、本人の発言をまとめた『ワッパ主席語録』を通じて、個人崇拝を思わせる体裁が整えられた。機関紙「荒らし人民日報」でも、主席の言葉が繰り返し引用・称揚されている。

法廷での姿

一方、2024年11月に偽ロレックス詐欺事件の主犯格として高知県警に逮捕された時点では16歳だった。2026年10月の証人尋問では、思想的な演出とは対照的に、活動資金は詐欺や違法な収益から得ていたこと、捜査が迫ると国外逃亡を図ったことなどを淡々と述べ、年齢を問われると黙り込んだ。理念の装いと、金銭目的の犯罪という実態との落差が大きい。

高知県警の捜査員は、年上の実行役を操り手の込んだ事件にも関与していた点について「まるで会社の社長のようだ」「裏社会の天才だ」と評している。

2025年3月には警視庁に別件(楽天モバイル回線の不正契約事件)で逮捕され、東京家裁の少年審判を経て同年11月に少年院へ送致された。2026年10月23日、高知地裁で開かれた共犯者の公判に証人として出廷し、初めて公の場で集団の内側を語った。

公式wikiでは代表者/創設者を「ワッパステイ」と記載し、「荒らし共栄圏万歳 ワッパステイ主席万歳」のスローガンを掲げていた。YouTube・Twitter のアカウント名も同名。

※当サイトでは少年の実名は掲載しない。

匿名・流動型犯罪グループ(匿流)

警察が「トクリュウ」と呼ぶ犯罪の構造

SNS などを通じて実行役を募り、互いに顔を知らないまま役割を分担して犯罪を行う集団を、警察は「匿名・流動型犯罪グループ(匿流=とくりゅう)」と呼ぶ。

偽ロレックス事件では、偽物を調達する者、買い取り店へ持ち込む者、潜伏先を手配する者、移送だけを担う者が分業していた。互いに知るのはネット上のアカウントだけで、実行役は首謀者が10代であることを知らなかった可能性もある。1人を逮捕しても別のアカウントが残り、人が入れ替わっても犯罪の仕組みは残る。捜査関係者は「事件の全体像も関係性も分からない難しさがあった」と振り返っている。

科学委員部

武器製造まで画策したとされる20〜30人の部門

少年の証言によれば、集団内には20〜30人からなる「科学委員部」があり、下水道を逆流させる嫌がらせ、悪臭を放つ爆弾、ナパーム弾を積んだドローンの製造まで画策していたという。

名称も役割も、サリンなどを製造したオウム真理教の「科学技術省」を思わせるものだった。少年自身、法廷で「オウム真理教の地下鉄事件に感銘を受けた」と述べ、影響力の大きい荒らし行為をしたいと考えていたと証言している。実際に武器が製造・使用されたという報道はない。

ワッパ主席語録

ネット上で公開され書籍化もされた全84ページの「語録」

少年の呼称を冠した「ワッパ主席語録」がネット上に公開され、全84ページの書籍にもなっている。マルクス、レーニン、毛沢東らの名を並べ、「荒らし主義革命」を掲げる内容とされる。集団との明確な関連は不明。

高知県警が押収した偽物の腕時計やスマートフォンとともに、「荒らし共栄圏」が作成したとみられる書籍のコラージュや、書籍に掲載された「ワッパ主席」のイラストが報道されている。

「副主席」

楽天モバイル回線不正契約事件で摘発された16歳

楽天モバイルのシステムに不正ログインし、他人名義の通信回線を契約・転売したとされる事件では、「副主席」を名乗る16歳をはじめ複数の中高生が摘発された。

警視庁が2025年2月に逮捕した中高生3人には、対話型生成AI「ChatGPT」でプログラムを作り、他人名義の回線契約を繰り返した疑いがあり、「主席」の少年はこのプログラムの提供を受けた疑いがあるとされる。不正契約された回線は別の詐欺に使われた可能性もある。

19人

偽ロレックス事件で少年が形成した匿流グループの人数

少年は秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を介して、偽時計を売っていた横浜市の20代の元大学生に接触。実行役をネットなどで募り、10〜50代の19人からなる匿流グループを形成していた。

実行役には、偽物を買い取り業者に持ち込む際には「スーツを着て行け」「バックヤードで真偽を調べさせるな」などと注意事項を指示し、詐取金の一部を仮想通貨で受け取っていた。一連の事件では少年と県内の10人を含む20人が詐欺などの容疑で逮捕された。

4,028万円

偽ロレックス詐欺事件の被害額

2024年6〜9月、中四国や近畿、北海道の買い取り業者に偽物の腕時計が持ち込まれ、被害額は4,028万円に上った。インターネットで確定申告する「e-Tax」を悪用した還付金詐欺と合わせ、高知県警が立件した被害は7千万円を超える。

少年は法廷で、1本数百万円で持ち込み「大量にやることで数千万、数億円の利益を得ることを計画した」と述べ、売る本数や地域、関わる人材をさらに拡大しようとしていたと明かした。

約3万5千件

不正ログインに使うためテレグラムで購入したとされるID・パスワードの数

警視庁などの逮捕容疑は、2024年4月に楽天モバイルのシステムに不正ログインして他人名義の通信回線を得た疑い。少年はテレグラムを介して他人のIDやパスワードを約3万5千件購入し、「約100回線を1件80ドルで販売した」と供述しているという。

日本介護協会サイト改ざん

「荒らし共栄圏万歳」と書き換えられ一時閉鎖

2024年11月、日本介護協会のサイトが「荒らし共栄圏万歳」などと書き換えられ、一時閉鎖された。狙われた理由は分かっていない。無関係な相手の日常へ踏み込み、集団の名を刻む。思想を掲げ、無差別に標的を広げる手口の一例として報じられた。

「非友好国」への逃亡計画

捜査が迫り、非正規の手段で出国しようとしたとの証言

少年は法廷で、別事件で警視庁の捜査を受けたため国外逃亡を考え、収益の一部を潜伏費用に充てたと語った。捜査が迫ると「日本と非友好的な関係にある国」へ、非正規の手段で出国しようとしたとも証言している。

共犯者の弁護人が「証言の信用性に関わる」として年齢を尋ねると、少年は「この裁判に関連ありますか?」と反問した後、黙り込んだという。

「四国は成功率が高い」

治安の良さが「狙いやすさ」と映っていた

少年は高知地裁で「四国は治安の悪い大都市に比べ、競合が少ない。成功率が高い」と証言した。犯罪が少なく警戒も薄い高知の安全さが、犯罪者には狙いやすさと映っていた。

高知県警の捜査員は、匿流が首都圏ではなく高知を狙って凶悪事件を起こす可能性は十分にあると警告している。都市部より防犯カメラが少なく、中山間では住宅が離れて住民の目も届きにくいことが理由に挙げられている。

荒らし連合軍(AARR)

公式wikiが「実質的前身」とする旧組織

荒らし共栄圏の前身にあたる荒らし集団。公式wikiの沿革によれば、荒らし連合軍(帝政荒らし連合軍)で有力な派閥をつくっていたワッパステイが、2020年に旧サーバー主からサーバーを買い取り、実質的運営者を退室させたことで荒らし共栄圏が成立した。旧サーバー主はその後「Freeze」を立ち上げたが2021年に名義ごと掌握され、2022年までに荒らし共栄圏が荒らし界隈を主導する立場になったと記録されている。

wikiには「主な構成員」として5つのハンドルネームと参加年、「関係者など」として他の荒らし集団・配信者らとの関係(友好・中立・終戦・敵対)が一覧化されている。公式wiki トップページを参照。

荒らし主義革命

迷惑行為を「革命」になぞらえた集団の思想

荒らし共栄圏が掲げたイデオロギー。インターネット上の迷惑行為・攻撃(「荒らし」)を、階級闘争や革命になぞらえて正当化する点に特徴がある。マルクス・レーニン・毛沢東主義の語彙を借用し、「荒らしは造反であり、ある階級が別の階級を打倒する暴力的行動である」といった定式化で、嫌がらせを思想的に粉飾した。

内部の意見対立を「荒らし内部の矛盾」、敵対者との対立を「反荒らしとの矛盾」と呼び分けるなど、毛沢東の矛盾論を模した論法も用いた。前者は説得で、後者は強制的・独裁的な手段で解決すべきだとする。

2022年8月には「荒らし文化大革命」の発動を掲げ、文化大革命期の中国を強く意識した自己演出(「大字報」「主席語録」「紅太陽」などの語)を展開した。こうした思想的装いの下で実際に行われたのは詐欺・サイバー攻撃・特定個人への嫌がらせであり、活動資金は詐欺や違法な収益から得ていたと、リーダー自身が法廷で証言している。

荒らし人民日報

集団が運営していたブログ型の機関紙

荒らし共栄圏が公式サイト上で運営していたブログ型の機関紙。「荒らし第一の大手新聞」を標榜し、2023年から2024年にかけて約30本の記事を公開した。名称・体裁ともに、中国共産党の機関紙「人民日報」を模している。「大字報」と題した記事も併せて掲載された。

記事の内容は大きく三つに分かれる。

  • 思想・宣伝 集団のイデオロギーや主席の言葉を説き、個人崇拝を補強する記事。
  • 実務 匿名化、アカウント停止の回避、端末制限の解除といった、攻撃や追跡逃れの手口を解説する記事。
  • 攻撃・中傷 敵対する個人や集団を名指しして攻撃する記事。外国人や障害者への差別的表現、特定個人への性的・暴力的な中傷が繰り返されている。

これらは、思想的な体裁の下で嫌がらせや犯罪のノウハウが共有され、無差別に標的が広げられていた集団の性質をよく示している。

当サイトは、こうした機関紙が存在した事実とその性質を記録にとどめる。閲覧者保護と二次加害防止の観点から、攻撃の具体的な手順や、標的とされた個人への中傷そのものは収録しない。

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